三輪瑛士
No.24021 Possibility
油畫
97 × 194 公分
2024
「見たものを見えたままに描く」ことを課題とする三輪瑛士(みわ えいじ)。我々は視覚的に認識する時、狭い視点をつなぎ合わせるように整合的な構造を組み立て、認知している。三輪はこの視点の切り取りと再構築という過程を絵画に表現している。映像のセルを重ねたような独特の絵画世界は、幅広い世代の人の心を惹きつけ、学生ながらも数多くの賞を受賞してきた。さらに2021年には、日本の著名なミュージシャンのミュージックビデオに登場する絵画作品を手がけた。唯一無二の作品世界から、時代の寵児となるであろう期待の作家だ。
視覚は整合的構造を静止画のように捉えるものではなく、たとえ目を閉じようと脳内にて絶え間なく変動していくため、視覚によって対象物の構造や数量を理解するためには連続的な注視と記憶の保全が必要となる。では逆に、そうした意識的な観察に移行する前の自然な受容の段階では、私たちの脳内には対象がどのように投影されているのだろうか。このような内なる風景を理解するために、私は見たものの形や色、数、スケール、密度、認識範囲といったあらゆる要素を直感的に画面上にて再構築する。たった一層の塗布では整理しきれないため、私は画面の結果を視覚的実感と照合し、幾度となく反芻する。その過程は画面上にもひとつの造形となって表出するが、私はこの目に見える過程というのも視覚像表現の本質の一端であると予感している。